2016年01月30日
新潟県警察 銃器対策部隊の実弾射撃訓練を初公開
平成28年1月26日(金曜日)、新潟県警察は新潟市西区に所在する県警察学校において、銃器対策部隊によるサブマシンガンの実弾射撃訓練を初めて報道陣に公開しました。
本年5月に開催される第42回先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)や5年後の東京五輪に向け、昨年から警視庁をはじめとした各都道府県警察が警備実施に向けた各種訓練を積極的に公開しています。
特に昨年末は、警視庁が対テロ特殊部隊である特殊急襲部隊(SAT)や銃器対策部隊の実弾射撃訓練を次々と公開し、その充実した警備能力を国内外にアピールすることで重大テロ発生の抑止力を強化しています。
そして我が故郷、新潟県においてもサミット関係閣僚会合のひとつとして本年4月23日から24日の間、新潟市で農業大臣会合の開催が予定されています。
当然、我が県でも農業大臣会合の開催に向け、新潟県警察の総力を挙げて各種テロ対策に取り組んでおり、その一環が今回の銃器対策部隊による実弾射撃訓練の公開というわけです。
今回の訓練に参加したのは、重大テロ対応の中核を担う警備部機動隊に所属する銃器対策部隊の男性隊員5名。
機能別部隊のひとつである銃器対策部隊は、凶悪銃器犯罪への対応や原子力発電所をはじめとした重要防護施設の警戒警備などを主要任務としています。
本格的な対テロ特殊作戦任務を担うSATの編成されていない新潟県警察では、事実上この銃器対策部隊が対テロ特殊部隊としての初動的役割を果たします。
発電量で世界最大規模の東京電力柏崎刈羽原子力発電所の警戒警備にあたる原子力関連施設警戒隊もこの銃器対策部隊所属の隊員から選抜されており、昨年も同所における陸上自衛隊との合同訓練に今回の銃器対策部隊が参加しています。
訓練に参加した隊員の個人装備は、他の都道府県警察に編成されている銃器対策部隊と同様です。
出動服の上から防弾腕帯付きの突入型防弾衣を着用し、両膝にはニーパッドを装着、頭部には防弾面付きのジェットタイプの防弾帽を被っています。
他の都道府県警察では、さらに腰周りに一般の制服警察官が装備しているものと同様の帯革を着用して警棒や手錠、拳銃を携帯することが多いのですが、今回は帯革を着用していません。
また、昨年に警視庁が公開した銃器対策部隊の隊員が全員素顔丸出しだったのに対して、こちらは全隊員が特殊部隊のように黒いバラクラバを着用し、素顔を秘匿しているのが印象的です。
主要武装は2002年のFIFAワールドカップ開催に伴う警備力強化を目的に、警察庁が全国の銃器対策部隊に大量配分したH&K社製MP5Fサブマシンガン。
3発制限点射が可能な3バースト・トリガー・グループを装備し、F(フランス)タイプと呼ばれる厚手のラバーパッドが設けられた新型のリトラクタブル・ストックと大型のフラッシュ・ハイダーを標準装備。
さらに光学照準器であるダットサイトの装着運用を予め想定して、B&T社製のロープロファイル・マウントベースが装着されている豪華仕様です。
導入当初は旧態依然とした日本の警察もいよいよ公然とサブマシンガンを運用する時代になったと専門誌でも特集が組まれるほど騒がれたのですが、今ではすっかりスタンダードなお馴染みの装備となりました。
なお、日本の警察では一般の警察官が装備する拳銃と区別するため、機動隊などで運用するライフルや機関拳銃を総じて「特殊銃」と呼称しています。
今回の公開訓練では、弾抜けを行った状態での基本動作訓練と実弾を使用した実射訓練を披露しました。
こちらは弾抜けを行った状態での立射(立撃ち)の基本動作訓練の様子。
B&T社製のロープロファイル・マウントベースには、光学照準器としてAimpoint社製のCOMP M2ダットサイトが装着されています。
フォアアーム部分に装着されているウェポンライトは、警視庁をはじめとして全国の銃器対策部隊で標準装備となっているB&T社製のTL-99です。
装着されているスリングは、MP5Fが全国配備された当初から使用されているスタンダードなH&K純正の3点式スリングです。
照準線の低いロープロファイル・マウントベースを装着していることから、アイアンサイト使用時と同じくストックに頬付けする必要があるため、顔面を防護する防弾面を跳ね上げて射撃を行います。
これではせっかくの防弾面を装備している意味がありません。ハイリスクエントリーをはじめとした銃撃戦では顔面への被弾という大きなリスクを伴います。
ちなみに警視庁の銃器対策部隊では標準装備だったロープロファイル・マウントベースの装着をやめ、SATが運用しているものと同じハイマウントベースを装着することで、この問題を解決しています。
当県でも是非ともハイマウントベースを導入してほしいですね。
膝射(膝撃ち)の姿勢による実弾射撃訓練の様子。横一列の射撃線に5人の隊員が並びます。
射座は1的から15的まであり、標的の背面の弾丸を受ける鋼鉄製の傾斜版には、緑色の塗装が剥離した生々しい無数の弾痕が確認できます。
この傾斜版に弾丸が直撃すると、弾丸は運動エネルギーを失い、砕けた金属片が地面に落下するという仕組みです。
機械制御されて回転する15m先の標的を狙います。
標的はナイフを振りかざす被疑者を模した実戦的な人像標的を使用しています。
射撃の号令がかかると、標的は反転して3秒間だけ射手と正対します。
この3秒の間に射手は銃を構えて照準をつけ、1発だけ正確に射撃を実施しなければなりません。
このサイクルが機械制御で5回繰り返されるため、1回の射撃訓練で計5発の弾丸を標的に撃ち込むことになります。
射撃場内には、9mmパラベラム弾の乾いた銃声が反響します。
射撃後の標的を観察すると、警視庁SATの実弾射撃訓練時と同じく、弾痕は全て究極的致命部位である顔面に集中していました。
射撃終了後、「安全装置よし」の復唱と共に安全装置の単発位置を安全位置に戻します。
昨年末のパリ同時多発テロ事件のように、近年の残忍なテロリズムの数々をはじめとして日本を取り巻く国際情勢は厳しさを増しています。
世界最大の原子力発電所や大型港湾施設、北朝鮮工作員や破壊工作を目的としたゲリラコマンドの上陸が予想される長大な海岸線を抱える新潟県において、これらの各種事案に対応する彼らは正に新潟県治安維持の最後の砦とも言えます。
本年開催されるサミットの全日程が無事終了することを祈願しております。
それでは!